2013/03/17

【映画】 Catch me if you can




小切手の偽造を繰り返して米国中の銀行から数百万ドルを詐取し、パイロットや医師、Lawyerなど様々な身分を騙った実在の大詐欺師の物語。1対1で身分を偽る詐欺師はたくさんいるが、周囲の目を欺いて社会に溶け込み、数百回も飛行機にタダ乗りしたり、医師として研修医の指導をしながら生活したり、大学講師として講義をしていたという。挙句には、スチュワーデスの見習い体験旅行をでっち上げて若い女の子を募集し、航空会社も騙してその一行をタダで飛行機に乗せ、ヨーロッパ視察をしながら航空会社の偽造小切手を切りまくって大儲けをするなど、やりたい放題である。そんなことを10代のうちにやってのけるというのは、ちょっと信じられない才能である。映画なので脚色されている部分も多いが、こちらのサイトに書かれているのがどうも実際にあったことらしい。飛行機内のトイレの便器を外して機体の中を通って走行中の機外に脱出するシーンは、有り得な過ぎて映画の脚色だと思って観ていたが、サイトによれば本当にそんな芸当もやってのけたらしい。

こんなバケモノが生み出されるところも、その異才が最終的にはFBIの犯罪捜査で活躍したり、セキュリティコンサルタントとして毎年数百万ドル(!)もの報酬を得るに至るというのも、いかにもアメリカらしい。若き日のディカプリオが瑞々しい、痛快な作品。


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2012/10/21

In Bruges ヒットマンズ・レクイエム

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昔、飛行機の中で見た映画が気になって、DVDを探しあてて見た。ベルギーのとても美しい古都、Brugesを舞台にしたイギリスの映画で、ストーリーはなかなかシリアスな悩める殺し屋の話だが、イギリスらしいシニカルでさりげないギャグが随所に散りばめられており、一応コメディということになっている。
そうしたギャグが、哀しい基調のストーリーと見事に調和して愛すべきキャラを際立たせており、3人の役者も実にいい味を出している。加えてブルージュの街並みは風情があり、儚げな音楽と相まって舞台を美しく演出している。
万人受けはしないかもしれないが、個人的にはこの感性とまとめ方は素晴らしいと思う。なかなかない傑作です。

このように↓下品な言葉が満載で、台本を検索してみたらfxxkingという言葉が110回も出てきた。




舞台に、ベルギーというマイナーな国にある、ブルージュという真に美しいがやはりマイナーな街を選んだところが実にセンスがいい。ベネツィアや南仏のようにメジャーな観光地ではこの話は成り立たない。スイスやオランダでもまだメジャーすぎる。ポーランドのように悲惨すぎる歴史を連想させる国もよくないし、プラハやドブロヴニクのような東欧圏の街も同様の観点から何か違う。北欧もいいけどヨーロッパの中心からちょっと遠すぎる感じがする。ベルギーという、豊かで平和で近くて程よくマイナーな国がちょうどいい(行ったことないけど)。



上のシーン、ベルギーのブルージュに行かなければならないと言う坊主頭の旦那に奥さんが“Why would anybody have to go to Belgium?”と尋ねる。「なぜあなたはベルギーなんかに行かなきゃいけないの?」と言ってもよい場面で、「anybody」と口をついて出た奥さんの無意識なベルギー蔑視も、この映画に通底するブラックユーモアのさりげない一表現。

個人的に最も好きなのは、KenとHarryがビール飲みながら口論するシーン。噛み合わない会話に苛立つHarry役のRalph Finnesの表情が最高にいい。“I'm suicidal. You're suicidal. Everybody is fucking suicidal.”は実に名言である。


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2011/09/20

【映画】告白




松たか子主演の話題作。我が子を生徒に殺された女性教師が復讐する話である。
ひたすら重く暗い作品。迫力あるストーリー(やや現実味は欠くが)と、美しい映像と音楽が、独特の世界を静かに作り上げる、いい映画です。

ごく普通の人々が、少年Aを起点として暴力と狂気に染まっていく。冷静に復讐を遂行していく松たか子も、壊れていく少年Bも恐ろしいが、ノリとゆがんだ正義感で陰湿なイジメに走るクラスメート達の狂気も恐ろしい。
色紙に隠されたメッセージに母が気づいた時、重なるように映し出される生徒達の無邪気な笑顔と歓声が、私には最も印象的なシーンだった。

この狂気をどこかで見たことがある気がした。


そう、『映像の世紀』だ。初めて見たのはもう10年以上前だろう。

第二次大戦中のドイツ占領下のパリで、ドイツ兵と交際したフランス人女性がたくさんいた。彼女達は、連合国軍がドイツ軍を撃退してパリを解放した際、フランス人からリンチを受けた。

リンチするパリの人々の、心底愉快そうな笑顔に、私は慄然とした。

占領下の抑圧のストレスとか、強者に取り入った者の自業自得とか、いろいろ意見はあるだろう。でもそうした背景はともかく、隣人の苦痛を純粋に楽しむ邪悪な笑顔を、ひとり二人の悪人でなくごく普通のたくさんの人々が満面に浮かべているこの光景が、映画やドラマの中じゃなくて現実なんだということが、当時の私にはにわかには受け入れがたかった。




件のシーンは、7:50くらいから始まります。画像が粗くて、これだと表情がよく見えませんが。

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2010/03/21

【映画】アバター

川崎のIMAXシアターで観ました。

この映画の見所は、やはり映像美だろう。同じジェームス・キャメロン監督が1991年にターミネーター2で活用した映像技術も当時としては衝撃的でしたが、今度のAvatarと比べれば児戯に見えて来る。

ストーリーの設定は、ケヴィン・コスナーのDances With Wolvesによく似ている。以下のような、展開の基本構造が同じである。
・美しい自然の中で、自然と調和して生きる人々
・そこに傍若無人に押し入って自然を破壊し、先住民と対立する白人達
・しがない主人公は先住民世界に送られた白人。自然の中での生活や先住民との交流の中で自己を再発見し、やがて先住民側の一人と恋に落ちる
・やがて白人達が攻めてきて、主人公は先住民側に立って戦う

Avatarに登場する地球人は、ヒスパニック系のMichelle Rodriguez以外の主要キャストは全員白人である。エキストラも白人ばかりだった(と思う)。他方、Navi(先住民)の主要キャストは全員黒人かNative American。この配役が、白人による植民地化の歴史を念頭に置いてなされたことは間違いないだろう。


ただし、勧善懲悪の分かりやすいヒーローアクションになっている点はDances with Wolvesとは大きく違う。一緒に観に行った連れは、ストーリーはコテコテのハリウッド映画と苦笑していた。

私も同様の感想を抱いたのだが、思いかえすとDances with Wolvesが公開された1990年当時、それは「西部劇ではインディアンは悪役と相場が決まっていたハリウッドの常識を覆した」「植民地支配に対する真摯な反省」などと喝采を浴びていたものである。それと同じ構図の設定が、いまや「コテコテのハリウッド映画」と言われてしまうのだから、隔世の感がある。20年ほどの間に、欧米至上主義の発想はずいぶん薄れたのだなぁ、と感慨にふけってしまった。

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2010/01/30

【読書・映画】手紙 東野圭吾






服役中の強盗殺人犯の弟が、兄の犯した罪のために様々な差別を受けながら生きていく姿を描いた作品。映画がよかったので、小説も読んでみた。映画に感動した方は、ぜひ、せめて最後の100ページくらいだけでも小説を読んでみてほしい。映画もよかったけど、とても大事な部分がカットされているので。

テーマは「差別」なのだが、差別と言っても、主人公に罵詈雑言を浴びせる人間は、作中ほとんど出てこない。みな彼に同情する。同情しつつ、そっと距離を置くのだ。誰もが、自分が一番かわいいから。
主人公は人生の節目節目で、恋人やバンド仲間や会社など、重要な人から距離を置かれてしまう。その人たち自身が、主人公に敵意や蔑みを向けるわけではない。でも彼らには彼らの、他者との絆があり、その絆は「社会」という無限の地平にどこまでもつながっている。その無限の地平の全ての人々をつかまえて「こいつは本当はいいやつなんです」と説得することは不可能だ。そして社会との大事な絆のいくつかを断ち切ってまで主人公と運命を共にしようと思う人は、ほとんどいない。人生の節目だからこそ、人は離れていく。そのことを、誰も責めることはできない。それが現実。

主人公は卑屈になっていく。そんな彼に勤務先の社長がかける言葉が、心を打つ。主人公がその状態から社会に生還するためには、こつこつと一本一本、人との絆をつないで社会性を取り戻すしかないのだ、と。
彼は元気になる。前向きに努力し、結婚し、子供ができる。映画では、主人公の妻が、どれだけ差別されても、逃げずに胸張って道の真ん中を歩いて行こうと訴えてくれる。とても感動的だ。

でもそれが甘いのだ。小説では主人公は、「正々堂々と生きていく」という考えこそが安易な選択であり、甘えなのだと、後に思い知ることになる。だから主人公は、あのような手紙を兄に書いたのだ。
なぜ「胸張って道の真ん中歩いて行こう」と言われた直後に、あんな手紙を書くのか、なぜ突然あの人を訪問したのか、映画ではよく分からない。小説を読むと、それがよく分かる。後味は映画の方がよいかもしれないが、より深く心に残るのは、原作の方だった。

差別とは何か、社会とは何か、社会の中で生きていくとはどういうことか、犯罪とは、贖罪とは、自殺とは、、、いろんなことを考えさせられる作品だった。


なお、映画も、多少端折ってはいるもののとてもよかった。映像は美しいし、配役もよかった。沢尻エリカが、非常に好演ではあったものの、あの役にはちょっと華がありすぎる感じもしたが。。

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