2014/07/19

モネの睡蓮

パリのオランジュリー美術館には、4枚のモネの睡蓮が四方を楕円形に囲む部屋が、二つある。

睡蓮の前に座ってぼーっと眺めていると、その風景の中に没入し、美しい水辺に佇んでいるかのような幻想を体験できる。水に浮かぶ睡蓮、水面に映る陽光や雲や木々の緑、そして水底で揺らぐ水草という、三つの次元が重なりあった情景は、穏やかで美しく、どこか懐かしい。その立体的で鮮明な感覚は、写真や録画映像では決して得られないし、夢とうつつの狭間のような幻影には、実際に池のほとりに座るのとは違った心地よさがある。

印象派は、写実主義から離れて被写体を敢えて抽象化して描くことによって、むしろよりヴィヴィッドで豊かな情景表現を可能にした最初の流派なのだと思うが、モネの睡蓮ほどにその技法の特長が遺憾なく活かされた絵画は他に見たことがない。

86年の生涯を通じて印象派の技法にこだわった偉人による晩年の遺作からは、一瞬の閃きではなく、蓄積された営為の先でしか到達できない境地のようなものが感じられた。

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撮影禁止なので、写真はWikipediaから



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