2015/03/14

【読書】 通貨燃ゆ 谷口智彦



通貨をめぐる政治を独自の切り口でまとめ上げた本書が書かれたのは約10年前だが、10年振りに読んでもやはり刺激的に満ちている。

本書のハイライトは、ドルがポンドから基軸通貨としての地位を奪った経緯(特にブレトンウッズでのケインズvsホワイトの交渉)や金ドル兌換停止というニクソンショックだが、ここでは日本が当事者となった通貨戦争を備忘のために記しておく。

ケインズが言うように、「既成の社会基盤を覆すのに、通貨価値を下落させることほど巧妙で確実な方法はない」。

日中戦争当時、蒋介石政権の転覆を図るために偽札作りを計画し、実行した旧日本陸軍の秘密作戦が存在した。阪田誠盛率いる、通称「阪田機関」なる特殊工作班が立案し、内閣印刷局、凸版印刷や巴川製紙所が参画したという。その作戦は、中国の偽札で軍事物資を調達することで、タダで戦争をしつつ、敵の通貨価値を下落させて購買力を削ぎ、社会を混乱させるという一石二鳥を狙うものだった。1940年前後のことだった。

それに先立つ1930年代半ばには、日本は、当時銀本位制をとっていた中国の通貨信用力を低下させるため、中国が保有する銀の密輸出を促す工作も行った。
これに対して英国政府は、フレデリック・リース・ロスを中国の財政顧問として派遣し、中国通貨の銀との交換を停止して、ドルとポンドを参照する管理フロート制に移行する幣制改革を行った。更に日本が横浜正金銀行を通じた中国通貨の売り浴びせに動くと、米国も銀と引き換えに中国にドルを供給し、中国支援を行った。1934年のことである。真珠湾攻撃の6年前、既に日本と英米は通貨をめぐって「戦争」状態にあったのである。


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