2015/07/07

ギリシャはユーロを離脱するのか

緊縮策への反対票が上回ったことで、ツィプラス政権は強気な姿勢で交渉に臨むだろう。

これに対し、EU側は譲歩の余地はないことを明言してきた。当初は「緊縮賛成派が6~7割」とか「緊縮受け入れという政策転換を正当化するためのお墨付きを得るため」などという楽観論もあったが、そうであるなら、国民投票をやらせて緊縮賛成への民意を確定させればよかった。EU側が国民投票を行うこと自体に激しく反発したのは、ギリシャからの事前の説明がなかったという事情もあろうが、それも踏まえて、後に緊縮反対への呼びかけを鮮明にするツィプラス政権の魂胆と、ギリシャ国民の空気を当初から正しく読んでいたからなのだろう。

失業率の高いフランスにはギリシャへの同情論もあるようだが、ドイツ国民の大半は譲歩を許さないだろう。週末までのEUの強硬姿勢は、ギリシャ国民に対して緊縮賛成への投票を促す脅しであり、同時にドイツ国民に対するパフォーマンスという側面もあったと思うが、事ここに至ってしまうと、強硬な態度は必ずしも債権回収の極大化につながらないことが、債務問題の難しいところである。

EU側が、妥協せずに緊縮策と債務返済を要求し続ければ、ギリシャは公然と借金を踏み倒す道を選ぶだろう。手続き的にそれがユーロ離脱に直結するわけではないが、こうなってしまっては、ECBにあれこれ指図されるよりは、金融・為替政策を自由に決定できるように自国の通貨を持つことを選択するだろう。
過去の債務を堂々と踏み倒すためには、その後同じ相手から借金しなくてもやっていける見通しが立たなければならない。この点を考えるうえでは、ギリシャの経常収支と、西側以外の資金提供元、具体的にはロシアと中国が鍵となるだろう。

ユーロ離脱後のギリシャは相当な輸入インフレに苦しむことになるが、観光その他の輸出産業は息を吹き返す。近年の緊縮策と内需の縮小により、ギリシャの経常収支はすでに黒字化している。通貨が切り下がれば、大幅な黒字に転換する可能性もある(必需品の輸入依存度も高いので、価格効果が大きく出て少なくとも当面は赤字に転落するだろうし、それが長期化する可能性もあるが)。
ロシアと中国のギリシャへの接近がどの程度進んでいるのかは分からないが、少なくとも規模的には、既にある程度の緊縮を達成したギリシャの多少の赤字を両国でサポートするのは、造作もないだろう。しかしそこまで行ってしまうと、ことは通貨問題に留まらない。ギリシャはEUやNATOからも抜けてロシアの庇護下に入るのか、という話になるが、ギリシャの体質は権威主義的ではないので(もしもそうであればこんなアンコントローラブルな事態にはなっていない)、さすがにその覚悟はないだろう。

それでもユーロ離脱はギリシャにとって、大いに現実味のある選択肢ではあり、かつそれはEUにとって、債権回収という意味では最悪の結果をもたらす。したがって瀬戸際戦略が有効に機能する。今度はEUが、難しい判断を迫られる番である。

ギリシャがどこまで強気に出られるかは、ユーロ離脱後にロシアや中国の軍門に下ることなく経済を再建できるかにかかっていると思われる。もちろん、ギリシャ国民が国民投票で示したのは緊縮策へのNOであってユーロ離脱へのYESではないが、ツィプラス首相の楽観論を完全に鵜呑みにしたとも思えず、離脱のリスクが高まることは理解したうえでのNOだろう。ギリシャ国民が求めるのは相当に大きな譲歩であり、EU側がそれを受け入れることはポルトガルやイタリアなどの手前、難しいのではないか。
土壇場で双方が譲歩して妥協が成立する可能性も残されてはいるが、合意が成立する可能性は、最早5割を切っているように思われる。
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