2017/06/30

【読書】 ストーリーとしての競争戦略 楠木建




本書の出版当時、話題になっているのは目にしていたが、どうも食指が動かなかった。『ストーリーとしての競争戦略』というタイトルから、種々雑多な成功談の寄せ集めのようなものを想像し、再現性がある学びが得られるような気がしなかったのである。
しかし今回機会があって手に取ってみて、もっと早く読んでおけばよかったと後悔している。本書は、事業戦略の策定にあたって必要な思考様式を丁寧に説明した良書だった。

もちろん、戦略策定に即物的に役立つテンプレートやフレームワークを提供してくれるわけではない(そんなものは存在し得ない)のだが、どういう戦略が「筋のよい」戦略で、それはどこがなぜ優れているのか、短絡的に思いつく単発の打ち手の集合体(本書では「静止画」と表現される)はそれと何が違うのか、よい戦略を作るためにはどういうものを目指さなければならないのか、といったことが、非常によく分かる。中でも、「部分の非合理を全体の合理性に転化する」という話は、なかなか切れ味が鋭かった。

冗長だというレビューが多いが、本書の要点を簡潔にまとめてしまうと、面白くもなく、あまり役にも立たなくなってしまうだろう。短く要約すれば当たり前のことも多く、どこかで聞いたような陳腐な言葉になってしまうのだが、それをいろんな言葉で繰り返し語ることで、読み手に考えさせ、腹に落とし込ませるところに、本書の意義がある。座右に置き、時々読み返したい本である。

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