2017/10/14

【読書】 隷属なき道 ルトガー ブレクマン



機会とAIによって労働が不要になる時代には、人々は、資産を保有して機械の恩恵を受ける層と機械との競争で疲弊していく層とに、ますます二極化する可能性が高い。

貧困は人間の判断力を奪い、更なる頽廃や犯罪を生み出す。愚かだから貧しいのではなく、「貧すれば(誰でも)鈍する」のだ。認知テストの実験はなかなか興味深い。

だからセーフティネットが必要となるのだが、用途を指定したりミーンズテストを課す従来の支援は、余計なbureaucracyを生み出す上に対象者に屈辱を与え、しかも効果が薄い一方、シンプルに現金を配る方法に効果があることは実証されている。

だからベーシックインカムを導入すべき、ということになる。


現実にベーシックインカムを導入するうえでは、それは計算上成り立つのか、その上でどのように民主的な合意を取り付けるのか、という二段階の問題が(大きく分ければ)想定し得るが、本書はそのいずれについても特に解を提示していない(思想の提示を主眼としているので、当然だが)。
本書で引用されている過去の実証例のほとんどは、正に「貧すれば鈍する」の状態にある最貧国の人々や生活保護受給者を対象としたものであって、先進国の恵まれた全国民を対象として、社会保障制度を廃止して現金給付に切り替えるという施策がこれまで実験された例はほとんどないということだろう。前者が成功したからと言って、後者が成功するとは限らない。

日本の場合は、特に公的年金を保険方式にしてしまったため、国民の権利意識が極めて強い。多くの国民は、自分がいくら払ったのか覚えてもいないが、とにかく政府から求められるだけ真面目に払ったのだから、自分の少し上の世代と同等くらいの年金をもらうのは当然の権利だと思っている(半分は税金で負担しているのだが)。「これから全国民にお金を配るので、あなた達の年金を減らします」と言われても納得しないだろう。

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