2009/08/23

民主党躍進の伏線を敷いた小泉純一郎

今日の民主党の躍進の一番の立役者は、小泉純一郎氏と言えるかもしれません。
ただしよく言われるような、「小泉構造改革路線が支持を失い、予想外の民主党の躍進を招いた」という意味ではありません。

自民党が選挙に勝てなくなったのは、格差が拡大したからでも「行き過ぎた市場原理主義」が支持を失ったからでもなく、小泉氏が自民党の伝統的な支持基盤だった集票組織を徹底的に破壊し、選挙戦の「ゲームのルール」を、組織票固めの争いから、無党派層が雌雄を決するものへと変えてしまったからです。
そしてそれは予想外でもなんでもなく、小泉純一郎氏が意図したこと、少なくとも「想定の範囲内」であり、「未必の故意」があったと、私は確信しています。

選挙戦の「ゲームのルール」が変わったことについては、4年前の郵政選挙の直後に別のところに書いたので、まずそちらを引用したいと思います。



自民圧勝でも、二大政党化は進む
2005/09/12 20:43

自民党のこれほどまでの圧勝には、率直に言って驚きました。

さて、この選挙結果を受けて、二大政党制は遠のいたという意見が主流のように見えますが、決してそんなことはないと、僕は思っています。

従来の自民党の強さの源泉は「組織票」と「アイデンティティの欠如」であったと思います。
組織票は言うまでも無いことですが、「アイデンティティの欠如」とは、もう少し正確に言うと「与党である、ということ以外にアイデンティティが無い」ために、他党が新しい政策を出しても、「その改革ならうちも考えてますよ」と融通無碍に模倣できるということです。
与党も野党も同じことを言っているのであれば、与党の方が実行力があるに決まっているので、自民党は与党で居続けることができるのです。

今回小泉さんは、この自民党の伝統的な強さに依存せずに、勝ちました。組織票に依存せず、「郵政民営化」という領域で明確なスタンスをとり、それを訴えて、勝ったのです。
重要なのは、投票率が上がり無党派層が勝敗を決したということと、「郵政一本槍」との批判はあったものの、有権者が政策を選択した選挙であったということです。

今回自民党は大勝を収めましたが、その勝利は、未来永劫攻略できないように思われた鉄のトライアングルに比べればはるかに脆弱な基盤に立脚したものです。次の指導者が(あるいは小泉さん自身が)失敗をすれば、そしてそのときによりよい他の選択肢が存在すれば、有権者は簡単に離れていくでしょう。

民主党は、郵政民営化での真っ向勝負を避けたという致命的なミスによって今回惨敗を喫しましたが、長期的な目で見ればそれは一つの敗北に過ぎず、勝負のルールは確実に民主党に有利な方向に変わりつつあるように思います。自民党しか勝てなかったルールから、民主党でも勝ち得るルールへと。自民圧勝の裏では、集票組織の弱体化が進んでいるでしょうし、有権者が政策に目を向けるようになったというのは、民主党にとってはポジティブな材料です。
もちろん、政権奪取は簡単ではないでしょうし、時間もかかるでしょうが、かつての圧倒的に不利な戦いを強いられていた状況に比べれば、より対等に近い戦いを挑めるようになりつつあると思います。
そしてそのルールを作っているのは、他ならぬ、今回自民党を歴史的大勝に導いた小泉純一郎その人なのです。

小泉さんは、きっと、このような選挙戦略が自民党支配の永続化には逆行することを頭に入れながらやっているのでしょう。彼の深謀遠慮には計り知れない所があります。バランスはあまりよくないけど、やはり偉大な政治家なのだと思います。

(引用終わり)



構造改革と郵政選挙が自民党支配の永続化に逆行し、民主党を利するものであったことは、4年前から分かり切っていたことで、小泉氏ほどのケンカの天才が、そのことに気づいていなかったはずがありません。4年前、大勝に浮かれる自民党議員たちを彼がどういう気持ちで眺めていたのかは知りませんが、いずれにせよ、「自民党をぶっ壊す」という公約だけは、彼は忠実に、徹底的に、実行したのです。それは様々な政治課題を巡る闘争を通じて徐々に行われ、その集大成が郵政選挙でした。

強固な地盤を誇った多くの古参議員が刺客の前に敗れ去り、その刺客たちが頼りにしたのは無党派層の風でした。
おかげで自民党の集票組織はガタガタになりました。郵便局のネットワークはもちろん自民党を離反し、今は国民新党や民主党の候補を支持しています。日本医師会では茨城県支部が民主党候補を支持するという反乱が起き、他の地域でも足並みがそろっていません。建設業界は長年にわたる公共事業の削減でボロボロになりました。農家も小沢氏主導のバラマキ政策でだいぶ民主党支持に流れました。

いま自民党は、民主党との差別化キャンペーンに必死です。「責任力」というキャッチコピーは、与党としての実行力をアピールするというこれまでの方針の延長線上で、特に目新しいものではありません。しかし政策面でも、「民主党の子育て支援はバラマキだが、自民党はきちんと教育にお金を出す」「民主党は消費税を上げないと言っているが、自民党は景気が回復すれば上げる」などと、違いを打ち出そうとしています。更にここに来て、労組や日教組の主張を批判するビラを作成し、安全保障戦略や性教育の方針等で差別化を打ち出しています。

自民党がこんな選挙広報をやっているところを見たことがありません。そもそも広報自体をたいしてやっていなかったということもありますが、民主党とは差別化をしないということが、郵政選挙以前まで一貫して取られてきた自民党の戦術でした。自民党の伝統的な民主党対策は、上述のように、政策で民主党と差がなければ、実行力で自民党が上回る、という前提に立ち、民主党のマネをすることだったのです。

「政策で差がなければ、実行力で自民党が上回る」、これこそが自民党常勝を可能にする唯一のロジックでした。政策での差別化は、唯一絶対の与党としての地位を自ら下り、相対的な存在に成り下がることを意味し、自民党にとっては自殺行為です。そうせざるを得ないほど、自民党は追い詰められてしまったということなのですが。

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