2017/10/25

【読書】 人工知能は人間を超えるか 松尾豊




類書に比べると、人工知能の発展の歴史を理論的な側面も含めて深掘りしており、説明も分かりやすい。さすが第一人者。

2年以上前の本なので、その後の経緯と比べても興味深い。

本書が書かれた2015年初頭時点では、囲碁でAIが人間に勝つのは当分先だろうというのが、著者も含めた大方の予想だったが、2016年3月にアルファ碁がトップ棋士のイ・セドルを4勝1敗と圧倒し、2017年5月には世界最強とされる柯潔に三連勝した。
最新のアルファ碁は、もはや人間が作った定石にも依拠することなく、ルールだけを与えられた素人の状態から機械同士の対戦を積み重ねて成長し、以前イ・セドルを圧倒した時のバージョンに100戦全勝したという。

他方、東大合格を目指していた東ロボくんは、2016年11月に、短期間での達成を断念して開発を中断した。文脈理解や常識的判断はできないため、国語や英語はもちろん、得意教科である数学においても文章題では苦戦したようだ。

この二つの出来事は、象徴的なように思える。囲碁のように正解が明確に定義されれば、圧倒的な計算力を活かしてモンテカルロなどの力業で解いてしまうが、言語の意味を理解できない機械ができることには限界がある。ただし、最高のクオリティを求めずにそこそこのものを安価に作りまくることは、アルゴリズムでも可能。

なお松尾氏は、シンギュラリティに否定的な見解を示している。機械が人間の手を離れて自律的に発展するためには、「生命」や淘汰圧のようなメカニズムが必要だというのが理由のようだが、なぜそれを機械に基本的な動機をプログラムすることで植え付けられないのかは、よく分からなかった。


(追記)

機械には欲望や経験が欠如している。人間は、三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)はもとより、実に様々な欲求を持っている。名誉欲や権力欲、承認欲求のような代表的なものから、なんとなく癒されたい、なんか気分を変えたい、というような自分でもよく分からない感覚まで、複雑な欲求や感情を持っており、時にそれらは相互に衝突する。

これらは人間が生物として進化する中で獲得して来た性質であって、その多くはデジタルに言語化された情報として世の中に存在している訳ではない。言語の意味を理解できない機械に、そうした感情を理解することができるだろうか?もしも言語の意味を本当の意味で理解できる段階に到達したとしても、人間と同様の共感性を持つことは難しかろう(人生経験の乏しいガリ勉に、人の気持ちが分からないのと同様)。

そのような意味で、生物としての体験・体感を持たない機械が、人間を真に理解して人間に匹敵する対人サービスを提供できるようになる日が近い将来に訪れるとは想像し難い。しかし、機械が自己変革能力を獲得して独自の進化を開始することは、ありそうな気がする。
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