2017/10/27

【読書】人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊  井上智洋



基本的な骨子は、

AIとロボットの普及
 ↓
労働者は不要になる
 ↓
資産家(株主)はますます富み、持たざるものは失業して貧しくなる
 ↓
ベーシックインカムでみんなを支えよう


という議論。また、中間層の失業と窮乏化が需要を減退させることが、中長期的な経済成長への足枷にもなり得ると主張し、長期のGDPを決めるのは供給側というのがマクロ経済学の常識に挑戦している(その辺は、別途読んでいるThe Rise of the Robotsと重なる)。

しかし、大部分の雇用が失われるという予測は(著者に限らないが)、本当に信憑性があるのだろうか?

人間がやり続ける仕事はクリエイティブ、マネジメント、ホスピタリティが求められるもの、というのは納得感が高い。藤野氏の二軸で言うと、右上、左上、右下に相当する。
著者はその上で、管理的、専門・技術的、サービス職に現在従事する2000万の半分の1000万人分程度しか雇用が残らないという未来を予測する。ただし著者はこれを「極端に悲観的な」シナリオと呼んでおり、最悪のケースを想定して準備しようという立場である。

著者も言うように、機械が人間との間に感情や感覚の通有性を持つことのハードルはかなり高いので、直接対人サービスの大部分が無くなるとは思えない。介護や看護、保育、教育は勿論、飲食やホテルにおいても機械化できる部分は限られるだろう。機械化が進んでも、「廻らない寿司」への需要は無くならなかったし、今後も無くなることはない。

製造業においても、全てを機械と3Dプリンターで作れるわけではない。皮革製品や衣服、陶磁器など、手間のかかる伝統的な製法でしか出せない味わいに対する需要は、高まると思われる。

雇用の大規模な縮小が明らかに進むのは、ホワイトカラー事務職、小売、輸送、工場労働くらいではなかろうか。そして生産性が上がった分、一部の金持ちにしか手が届かなかった「手の込んだ」物やサービスをみんなが欲しがるようになり、そうした業種に労働力が流れ行くというのが、より現実的な将来像ではないか。例えば家事代行サービスは、20世紀の日本では庶民が利用できるようなものではなかったと思うが、近年その需要は急激に拡大して大きな雇用を生んでいる(家電の自動化が進んだのにも関わらず、である)。

過去20年を振り返れば、情報化で社会は大きく変わった。その大きさの計り方は人によって様々だろうが、社会の仕組みが根底から覆されたわけではない。今後の数十年も、振り返れば色々新しいものが出てきたな、と思うような変化が漸進的に起こっていくという方が実感に近いのではないだろうか。



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