2009/08/29

統治機構を考える(その6):民主党の5原則・5策

ようやく民主党のマニフェストに戻ってきた(当初の想定よりずっと長くなってしまった・・・)。

その1で述べたように、民主党はイギリス型政治を目指している。前回の表に即して言えば、、、
1.政府と議会の関係に関しては、与党・内閣二元体制からの脱却を目指している。この点は後述する。
2.議員と政党との関係で言えば、自民党と比較すれば、候補者よりも政党に重きを置いた選挙を展開していると言える。政策内容はマニフェストで統一されているし、資金面でも民主党は党本部からの一律の補助が結構手厚い。なお民主党のマニフェストに盛り込まれた比例定数の80削減は、比例代表制が政党単位の選挙であることを考えると政党主導から遠ざかるようにも思えるが、小選挙区制の徹底は二大政党制をもたらすので、これもイギリスに近づく方向である。
3.議会の役割を今後どうして行くかは未知数だが、民主党は党首討論等を積極的に利用して国会を「アリーナ」として活用するように努力してきたと言えるだろう。ただしこの点はむしろ、野党になる自民党の対応によって大きく変わるかもしれない。

さて、一元化の問題である。もう一度5原則・5策を引用しよう。

5原則
1.官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ。

2.政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ。 

3.各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ。 

4.タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆(きずな)の社会へ。

5.中央集権から、地域主権へ。


5策

1.政府に大臣、副大臣、政務官(以上、政務3役)、大臣補佐官など国会議員約100人を配置し、政務3役を中心に政治主導で政策を立案、調整、決定する。 

2.各大臣は、各省の長としての役割と同時に、内閣の一員としての役割を重視する。「閣僚委員会」の活用により、閣僚を先頭に政治家自ら困難な課題を調整する。事務次官会議は廃止し、意思決定は政治家が行う。 

3.官邸機能を強化し、首相直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する。 

4.事務次官・局長などの幹部人事は、政治主導の下で業績の評価に基づく新たな幹部人事制度を確立する。政府の幹部職員の行動規範を定める。 

5.天下り、渡りのあっせんを全面的に禁止する。国民的な観点から、行政全般を見直す「行政刷新会議」を設置し、全ての予算や制度の精査を行い、無駄や不正を排除する。官・民、中央・地方の役割分担の見直し、整理を行う。国家行政組織法を改正し、省庁編成を機動的に行える体制を構築する。


一元化は5原則の2番目に掲げられている。 前回述べたように、日本のいわゆる官僚主導の問題は、官僚と与党に残った族議員(および業界団体)が結託して内閣に抵抗してきたことにある。そしてそれらは、官僚からのイニシアティブばかりでなく、業界団体や政治家の意向が強く働いていた場合も多い。官僚主導を改めるには、内閣が一致団結してリーダーシップを発揮することが絶対に不可欠であり、そのためには与党・内閣を一元化することは必須条件である。5策の2番目で「各大臣は、各省の長としての役割と同時に、内閣の一員としての役割を重視する」とあるのも、内閣の結束を強める趣旨である。これまでは大臣が官僚や族議員に突き上げられて省益寄りの言動をし、官邸の改革案に反対することが多かったからである。

5策の1番目の「100人政府入り」というのは目に付くが、前回述べたように、現在でも大臣・副大臣・政務官合わせれば70名近くが政府に入っているので、100人という規模はそれほど目新しくはない。むしろ、任期(一内閣一閣僚のような)に触れてほしかったが、政府に入る政治家を増やすという方向性は評価したい。

2と4は政治主導を確立する道具立てで、3は縦割りを廃する仕掛けである。

私はこの5原則・5策の方向性はいずれも評価するが、あえて不満を言うならば、与党・内閣二元体制
を是正する具体的方策があまり書かれていないことである。「政調会長は必ず入閣する」などの発言もあったが、結局マニフェストや政策INDEXには入っていない。政府入りする国会議員を30人増やすだけでは、甚だ心もとない。
具体的には、①党の実力者は全員入閣し、「党の要職」というものを基本的に全廃する、②「部会」も廃止し、議会の中の委員会に議論の場を移す、③国会議員と官僚との接触を禁止する法律を速やかに制定する、などが行われれば、一元化は貫徹されるだろう。

民主党はもともと官僚や業界団体との関係が薄いという面もあるが、日教組や労組など、民主党寄りと目されている団体もあるし、業界団体の中にはすぐに政権与党に擦り寄るところが出てくるだろう。意識的に構造を改革し、議員の行動を規律していかないと、やがて個々の議員が族議員化して新しい「鉄のトライアングル」ができてしまう。


内閣・与党一元化が成功するかどうかは、組閣によってかなりの程度はっきりする。実力者が閣外にいて「ポスト鳩山」をうかがい、内閣の足を引っ張ったりするようでは、一元化は貫徹されない。例えば、表舞台から身を引いた小沢一郎氏と、近年執行部から距離を置いている前原氏の動向などは気になるところである。

なお、小沢氏は実は、もう20年近く前から内閣の強化や一元化を訴えてきた。彼の『日本改造計画』を読むと、それを確認できるだろう。小沢氏は現時点では、入閣する可能性は低いと見られているが、彼が閣外から「院政」を敷くようでは、本人が20年前から主張している内閣の強化と矛盾する。その意味でも、小沢氏の人事とその後の振る舞いには注目していきたい。

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