2009/09/02

統治機構を考える(その7):数年以内に参議院改革論議が本格化する

今回の衆院選は、得票率47%*に過ぎない民主党が全体の64%の議席を取る小選挙区制の恐ろしさを遺憾なく見せ付けた。民主党の大勝で、二大政党制がようやく形を見せつつある。

*小選挙区での得票率。比例では42%

既に広く指摘されているように、来年の参議院選挙は、政権交代劇の最終決戦となる。民主党は現在参議院で過半数の議席を有していない(だから民主党は、衆院選の議席に関わらず社民党・国民新党との連立を組む方針を表明していたのだろう)。

来年の参議院選挙に勝てば、民主党はその後3年間(次の参議院と衆議院の任期が同時に来る2013年まで)政権を握ることが確定的になる。逆に民主党が議席を減らし、自民党と公明党が過半数を獲得すると、国会はこれまでとは逆の「ねじれ」を抱えることになる。もしも自民党が大勝すれば、政界再編の動きが出てくるだろう。次回参院選は、自民・民主の二大政党制が定着するか、混沌の時代に突入するかの分水嶺となる。

このように考えたとき、来年の参院選後、早ければ来年中、どんなに遅くとも10年以内に、参議院の抜本改革が政治改革の最重要課題の一つとして浮上してくるだろうと予想できる。今の参議院は、二大政党制のもとでは「ねじれ」を日常化させるからである。


先に述べたように、来年の参院選でもしも自公が勝てば、国会は「ねじれ」になる。しかも衆議院での議席は、民主・社民・国民新党を足し合わせても、再議決に必要な3分の2に達しない。3分の2を握っていた自公政権でさえ、「ねじれ」の下での国会運営は至難だったことは、福田・麻生両政権の経験が教えてくれている。民主党政権の改革モメンタムは急速に衰えるだろう。

もちろん、民主党はそれが分かっているので、次回参院選は死に物狂いで勝ちに行くだろう。民主党が勝てば、その後3年間は選挙が無い(民主党が衆議院を解散しない限り)ので、この間政権は安定する。しかしその後はどうか。更にその先はどうか。「ねじれ」の懸念は永遠になくならない。衆院と参院の任期は、ずれており、双方の選挙の間に移り気な有権者の支持が動くことは、いつでも起こりえるからだ。

そうなると、そもそもこの「ねじれ」というものを引き起こす二院制とは何なのか、という議論が必ず起こる。そして、第二院である参議院の存在意義がチャレンジされることになる。

実は日本の参議院は、諸外国と比較しても権限が強い。同じ議院内閣制でも、イギリスの上院は反対しても審議を多少引き延ばすだけで結局下院の議決が通るし、ドイツでは連邦議院の賛同が必要とされる法律は限定されている。全ての法律に参議院の議決(又は衆院での3分の2の再議決)を必要とする日本の二院制は、実は例外的なのである。**ちなみにアメリカも上下両院の議決が必要だが、アメリカは党議拘束が無く、法案ごとに賛否が変わるので、与野党に分かれてスタック、という事態は起こらない。

** 大山礼子 国会学入門 第2版 三省堂


参議院改革はもうずっと前から続いている政治テーマであり、参議院廃止論者も多い。廃止論者によれば、「参議院は、衆議院に一致するのなら不要だし、反対するのなら有害である」とされる。つまり、衆参が一致している間は「不要論」しか出てこないが、それが一致しない「ねじれ」状態では「有害論」が起こるのである。これは大きな違いである。

「ねじれ」とそれがもたらす政治の停滞の問題を構造的に解消するには、二つの方向が考えられるだろう。一つは参議院の権限を弱めて衆議院のみで可決できる議案を増やすことだが、これには憲法改正が必要になってしまうので難しい。もう一つは参議院のみ党議拘束を弱めることで、これには法的な障害は何も無い。しかし今の政治システムで党議拘束だけ弱めると政権が不安定になるので、政権与党はそれをやらないだろうし、「ねじれ」を利用して政権を攻め立てたい野党もやらないだろう。さてどうするか。

実現可能性はともかくとして、個人的には参議院は、①衆議院とは別の構成になるように代表の選び方を変えて、かつ②権限を制限するようにしたらよいのではないかと思う。①に関しては、世界的にはアメリカやドイツのように人口に比例しない地域代表にする(カリフォルニア州もアラスカ州も、上院議員の数は同じ)という例が多いが、日本で最大の利害対立は世代間だと思うので、例えば世代別選挙区を設けるのも一案だろう。

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