2009/09/05

統治機構を考える(その8・完?):政治制度は、ガバナンスの仕組み

政治システムとはガバナンスの仕組みであると、私は思っている。
国民が一部の人たちに権力を委託して、国民が望むことをやってもらう、そのための仕組みである。(当たり前と言えば当たり前だが。)

そこで重要となる視点は、企業やNGOなど世の中のあらゆる組織のガバナンスを考える際と、基本的に変わらないと思う。

誰が誰を選ぶのか、したがって誰は誰に対して責任を負うのか、不正や権限の濫用は誰がどうやってチェックするのか、といった、あらゆる組織に共通するごく当たり前のことである。そして、その視点を通してみれば、基本的な組織論が分かっている人であれば、政治システムの成り立ちとその問題点はすっきり理解できるはずなのだと思う。

ところが私がこれまで目にしてきた政治制度の教科書や一般向け解説書で、こうした視点で書かれたものは皆無であった。ほとんどが、憲法の規定をなぞるように教えるものだから、何が重要なポイントか、全く伝わってこない。
「国会には、通常国会・特別国会・臨時国会の3種類があって、、、」などという、はっきり言って普通の人にとってはどーでもいいような枝葉末節から解説して、覚えこませようとするから、ちっとも面白くない。その一方で、党議拘束のような、憲法には書かれていないけどガバナンス設計においてクリティカルな要素にはほとんど触れない。
また、三権の関係を「分立」一本槍で説明しようとするから、議会と政府の一体性や、そこから派生する党議拘束の必要性、マニフェストの意味などが理解されない。

大統領制と議院内閣制の決定的な違いは、誰が行政府の長を選ぶかにある。ここまでは誰でも知っている。その違いは、言い換えれば、行政府に対するガバナンスの経路のあり方である。大統領制は国民が直接大統領を統御するのに対し、議院内閣制は議会を経由する間接的な統御である。
そして、その他の制度上の違い(大統領の拒否権や、議院内閣制の議会による内閣不信任)は、その2~4で見たように、突き詰めれば全てこの「誰が政府の長を選ぶのか」という一点の違いに帰着するのである。ところが多くの解説書は、この基本的な意味を確認することをすっ飛ばし、相互の関連を説明することなく、表面的な違いを羅列することに終始する。だから日本では、民主主義の制度の根本原理が全く理解されていない。そして、議院内閣制の日本において「党議拘束を全廃しよう」とか「首相公選制を導入しよう」と言った暴論が出てくるのである。

民主主義の制度という全ての国民にとってとても大切なことに関して、このようなつまらない教科書ばかりが流布し、その結果正確な理解が共有されないというのは、とても問題だと思う。


大して推敲もせずに書いてしまったので読みにくかったと思うが、いつかもう少しきちんと平易に書き直したいと思う。

今回で「統治機構」シリーズは一応終わりにしようと思っているが(お付き合いくださった奇特な方、ありがとうございます!)、気が向いたら、その1の後半に挙げた諸説へのコメントを書くかもしれない。

特に首相公選制は、ガバナンスの視点から面白いテーマである。先に首相公選制を「暴論」と述べたが、かなり緻密に制度設計すれば、全く不可能なことではないと思う。しかし、ただ首相の選び方を国民投票にすればいいと考えているとしたら、それはやはり暴論である。
首相公選制は、議院内閣制における首相を、大統領のように国民の選挙で選ぶ、混合型のシステムだ。その2で提示した図に即して言えば、首相につながる赤い矢印が国民からも議会からも出ているという、よく分からない制度である。それが極めて難しい隘路を通る制度設計にならざるを得ないことは、その2~4を読んでいただければ、想像がつくだろう。
首相公選制は、首相が国民と議会のどちらに直接責任を負うのか、極めてあいまいな仕組みである。例えば、国民投票で選ばれた首相が作った内閣を、議会は不信任によって総辞職させることができるのだろうか?野党の人が首相になったら、与党はみんな反対するから法案が一つも通らないのではないか?そうならないようにするために、党議拘束を無くすのか?等々、疑問点がいくらでも出てくる。そしてこれらを全て変えていくと、結局、大統領制に行き着いてしまうのである。

ちなみにフランスの大統領制は、大統領制と議院内閣制を巧妙にミックスした稀有な例であり、首相公選制を考える上でも参考になる。

政治 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
全回読ませていただき、大変勉強になりました。
僕はせっかく英国にいるのに・・・、何をしているんだと反省です。
また帰国時にお話聞かせて下さい。
ありがとうございます!イギリスは僕もそんなに細かく知っているわけではないので、現地でウォッチしてて気づいたことなど、今度教えてください。

> 全回読ませていただき、大変勉強になりました。
> 僕はせっかく英国にいるのに・・・、何をしているんだと反省です。
> また帰国時にお話聞かせて下さい。

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