2011/01/12

【読書】孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本 (朝日新書)



世代会計についての一般向け解説書。世代間格差問題について、財政学のみならず政治学や憲法論などの視点も入れて多角的に解説しており、非常によい入門書となっている。例えば、累積している国債・地方債だけでなく、既に政府がコミットしてしまっている将来の年金債務等を加えると財政赤字は膨大な水準になるという指摘は、意外と盲点だが重要である。

ただし、世代会計の概念は解説してくれているものの、実際の計算手法の解説はほとんど付されておらず(一部、資料の出典のみ記載されている)、著者らの推計の妥当性を検証する術が与えられていないのは残念である。「一般向け」ということで詳しい解説は省いたのだと思われるが、ここまで説明が不足していると、数字の信憑性を判断できない。以下に不足点を例示するが、まあ、このような欠陥はありつつも、画期的な良書だと思う。

第1に、読者は世代会計の出来上がりの数字を見せられるだけで、負担と給付に何が入っているのか、全く分からない。例えば、負担する税金はいくらで社会保険料はいくら、その使い道は年金にいくら、国債の償還にいくら、という風に大きな内訳を見せてもらえれば、より実感がわいただろう。

第2に、本書のタイトルにもなっている1億円という数字。これは先送りされる借金をこれから生まれる「将来世代」の数で割ってその現在価値を出しているそうなのだが、この分母である「将来世代」が一体いつからいつまでに生まれる何万人なのか、全く説明されていない。そもそもこのようにある世代を境に負担が一変するという仮定は現実的でないと思うが(将来のある時点において、30歳世代は一億円の借金を一生懸命返しているが、その上の35歳世代は全く返していない、という社会は、政治的にあり得ないだろう)、それをおいておくとしても、分母となった「将来世代」が1年で生まれる100万人なのか、10年で生まれる1,000万人なのかで、結果は10倍違う。これを説明していないのは致命的だと思う。本書では「世代」を5年一区切りで数えているようにも読めるが、仮にそうだとすると、溜まりに溜まった借金を5年間に生まれた世代のみに集中させるという仮定は現実的でないだろう(その後に生まれる世代にも薄く配分されるはずである)。

(2009年6月)

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