2011/10/02

【読書】 ゼロ金利との闘い 植田和男



日銀政策委員会の審議委員として日銀の金融政策決定に深く関与してきた著者が、日銀の金融政策を振り返って総括した書籍。

リーマンショック前の2005年に書かれた本書は、全体的に金融システム不安への強い危機感がにじみ出ており、バブル崩壊がもたらした金融の機能不全が2000年代初頭までの日本経済にとっていかに大きな問題であったかを改めて痛感させられる。今年出版された翁邦雄の『ポスト・マネタリズムの金融政策』が、金利調節を通じた物価の安定という、中央銀行の通常の金融政策の議論に終始しているのとは好対照を成している。

例えば日銀が銀行保有株を買い取った政策について、植田氏が銀行のバランスシートからリスクを取り除き、金融システムを安定させる政策として紹介しているのに対し、翁氏は(当時の対外的説明としては金融システムの安定性が強調されたことを確認しつつも)国債よりも通貨から遠い資産を日銀が買い取ることで、マネーストックの増加とデフレ脱却を目指した政策の一つとして位置づけていることは面白い。

リーマンショックを経て、日本の金融システムの健全性、少なくとも2000年前後のような脆弱性が払拭されたことは、裏付けられたと言えよう。にも拘らず貸し出しが増えない原因は借り手サイドにあり、根本的には経済の潜在成長率が上がらないことにある。

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