2011/11/10

大手新聞の横並び袋叩き

おなじみの一斉攻撃が始まった。

日経を含む全ての大手全国紙が、昨日の朝刊一面トップでオリンパスの損失飛ばしを報じた。

FT等の海外紙が以前から一面トップで取り上げてきたにもかかわらず、日系紙はこのほとんど明白な巨額の不正疑惑にこれまで口をつぐんできたわけだが、会社が認めた途端、一転して随分と威勢がいい。大勢が固まらぬうちは沈黙しておいて、相手が弱ったら一斉に徹底的に叩くのはいつものパターンで、最近では松本龍元復興担当大臣の東北訪問時の暴言事件が記憶に新しい。

自社のことを棚に上げてこういう↓高飛車な社説を書ける面の皮の厚さには、いつもながら感心してしまうが、問われているのは、「日本企業のガバナンス」だけでなく、メディアの健全性でもあることを、少しは自覚してはどうか。



 日経

経営責任厳しく問われるオリンパス (2011/11/9)

精密大手のオリンパスは、1990年代の証券投資で発生した損失が先送りされ、その穴埋めとして企業買収に伴う多額の助言手数料などが使われていた、と発表した。10年以上も投資家を欺いていたことになり、歴代の経営陣の責任はきわめて重い。

明らかになってきたのは、オリンパスの企業統治が長年にわたり機能不全に陥っていた実態だ。取締役会は不自然な取引を見逃し、ウッドフォード元社長が独自調査を突きつけても動かなかった。

監査法人もファンドを使った損失の先送りという不明朗な会計処理を長年認めてきた。上場企業として経営の体をなしていなかったと言われても、仕方あるまい。

オリンパス問題をきっかけに他の日本企業にも疑いの目が向けられるようなら、資金調達などに支障が出る。そうした事態を避けるために、まずオリンパスが自ら正しい情報を迅速に発信し、市場の混乱を鎮める必要がある。

同社の高山修一社長は先送りされた損失金額について、調査・集計中であることを理由に回答を避けた。先送りの額によっては過去の利益や資産状況が、遡って大きく修正されかねない。内部集計が終わった段階で、投資家に速やかに開示すべきだ。

オリンパスの6月末の貸借対照表には1682億円の「のれん」(買収価格と純資産の差額)が計上されている。買収企業の価値が大きく下がっているようなら、評価を大きく落とさなければならない。そもそも価格が適正だったのかどうかなど、過去の買収について徹底的に調査すべきだ。

日本市場の監督者や、捜査当局の役割も重要になる。

オリンパスが株式を上場している東京証券取引所は、決算発表や情報開示を待つだけでなく、経営陣の話を直接聞くなどして自ら情報の収集に動くべきだ。損失先送りの狙いや意図は、同社株の上場を維持すべきかどうかの判断に迫られるような場合には、重要な根拠の一つになる。

米連邦捜査局(FBI)が調査に乗り出すなど、オリンパス問題は海外の関心も高い。日本では証券取引等監視委員会が資料の分析を始めており、今後は事実関係の解明が国内外で並行して進められる可能性がある。日本の金融・捜査当局がこうした動きに遅れることなく、国際的な連携を図っていく必要もある。



読売

オリンパス疑惑 日本企業の信頼を失墜させる
(11月9日付・読売社説)

 巨額の投資損失を隠蔽したうえに、企業買収を装ってモミ消しを図るとは言語道断である。

 精密機器大手のオリンパスは8日、英国人社長の解任で表面化した不透明な企業買収について、実は1990年代からの投資損失を処理する偽装工作だったと発表した。

 弁護士らによる同社の第三者委員会の調査で判明したという。長年にわたる“粉飾”によって、株主や取引先を欺き続けてきた罪は極めて重い。

 オリンパスは内視鏡で世界トップという日本を代表する優良企業だ。一連の不正経理疑惑は、海外でも大きく報じられた。

 オリンパス1社にとどまらず、日本企業全体の統治能力やコンプライアンス(法令順守)への信頼を失墜させかねない。

 オリンパスは3年前、英医療機器会社を約2100億円で買収した際、約700億円の仲介手数料を投資助言会社に払う形にした。数%という手数料相場とかけ離れた、破格の報酬額だった。

 資源リサイクル会社など国内3社の買収でも、700億円を超える買収額の4分の3をその後、損失として処理した。

 こうした会計操作で捻出した資金によって、実態のない会社に付け替えていた投資損失を穴埋めしていたという。

 オリンパスは買収額などが不自然だと指摘した英国人社長を10月中旬に解任し、買収は適切に行われたとの説明を繰り返していた。これは、会社ぐるみの背信行為というほかない。

 すでに引責辞任している菊川剛前会長兼社長ら役員3人は、不正への関与を認めているという。8日、副社長は解任され、監査役も辞意を表明した。

 証券取引等監視委員会は、粉飾決算の疑いもあるとみて、資金の流れや、他のオリンパス幹部の関与などについて、本格的な調査に乗り出した。疑惑の全容解明を急いでもらいたい。

 お目付け役の監査法人が、きちんと責任を果たしてきたかどうかも、厳しく問わねばならない。

 大王製紙でも、創業家出身の前会長が、グループ企業から100億円超の私的融資を受けた不祥事が発覚した。健全経営や情報開示といった社会的責任を果たそうとしない日本企業の国際的な信用が揺らいでいる。

 企業経営者は、「社会常識」に反する「社内常識」がまかり通っていないか、謙虚な気持ちで点検してほしい。

(2011年11月9日01時04分 読売新聞)



朝日

天声人語
2011年11月9日(水)付印刷

 高千穂製作所の誕生は約90年前、大正半ばである。八百万(やおよろず)の神々が宿る高千穂の峰。海外に通じる製品を作らんと、商標は世界の高天原(たかまがはら)、ギリシャ神話の聖地から拝借した。オリンパスの名は、こうして生まれる▼高貴な社名と、先人の理想を裏切る失態である。企業買収に絡む不自然な散財。巨額を動かした目的は、バブル期から引きずる含み損の穴埋めだった。粉飾決算は上場廃止に値する不名誉だ▼真相に迫る英国人社長を切った前会長兼社長、副社長、常勤監査役らこそ、不正に手を染めた面々だとか。自浄能力のない日本の経営陣と、独り乗り込んで悪を暴く外国人。単純明快な筋立てが悲しい▼内視鏡のトップメーカーである。それが財テクの古傷を見過ごし、いや、見て見ぬふりで20年も放置し、切るに切れぬ病巣にした。手術には外国製のメスを要したが、それは一本で十分だった。この情けない展開、ことは企業統治の緩さに関わり、日本の企業や市場全体が疑われかねない▼大王製紙の前会長が子会社の金を使い込んだ件では、同族経営の甘さが言われた。オリンパスで問われるべきは、サラリーマン役員の無責任と保身だろう。不正を抱えたまま出世できる気楽な稼業である▼顕微鏡と体温計に始まる同社は、戦後間もなく世界初の胃カメラを世に出した。内視鏡の先駆として、数えきれぬ人命を救ってきた開発陣が気の毒でならない。誇り高き光学企業が、技術ではなく不正経理でつまずく不条理を何としよう。



毎日

社説:オリンパス粉飾 不正の根源の解明を

 英国人の元社長が指摘した企業買収をめぐるオリンパスの不明朗な資金の動きは、先送りしてきた損失を穴埋めするための操作であったことが判明した。不正経理は90年代から続いていたという。長期にわたって行われていた粉飾の実態を明らかにし、それにかかわっていた経営者への民事、刑事両面での責任も厳しく問われなければならない。

 「買収は適正に行われた」と一貫して説明してきたオリンパスが、一転して自ら不正経理を認めたのは、7日夕になり菊川剛前会長兼社長らが高山修一社長に損失隠しを明らかにしたからだという。

 今回のオリンパスをめぐる問題の発端は、マイケル・ウッドフォード元社長の解任だった。英国の医療機器メーカー「ジャイラス」の買収に伴う投資助言会社への高額の支払いに疑問が投げかけられた。

 また、国内の電子レンジ容器製造販売会社など3社の買収に伴う損失計上の問題も明らかになり、海外のメディアが大きく報じ、欧米の捜査機関が調査に着手するといった展開をたどった。

 菊川氏らが損失隠しの事実を明らかにしたのは、こうした圧力に抗し切れなくなったからだろう。逆に言うと、ウッドフォード氏の社長就任と、半年足らずでの解任がなかったら、粉飾による隠蔽(いんぺい)が続いていたかもしれない。

 高山社長は、損失隠し問題の責任者は菊川氏と森久志前副社長、山田秀雄常勤監査役の3人だとして、「必要があれば刑事告発も考える」と述べた。

 証券投資で生じた多額の損失が決算書などに記載されず、ごく一部の関係者しか把握しない「含み損」として、長期にわたって扱われていたとみられるが、この粉飾がなぜチェックできなかったのか、他の取締役の責任も含めて徹底的な検証が必要だ。また、決算と経営をチェックしてきた監査法人の責任も重大だ。

 オリンパスに対する海外からの疑念は日本の企業社会全体にも向けられている。有価証券報告書への虚偽記載の疑いが濃厚で、上場廃止の可能性もある。

 先送りしてきた損失の額や、それを穴埋めするための操作がどのように行われたのか。オリンパスの不正経理の詳細はこれからの調査にかかっているものの、不正防止のために制度整備が続けられてきたにもかかわらず、チェック機能が働いていなかった点を重く受け止めるべきだ。

 日本企業のガバナンス(企業統治)が問われており、海外からの疑念を払拭(ふっしょく)する意味からも、証券取引等監視委員会や東京証券取引所などには、厳正な対応を求めたい。




産経は、1週間前に比較的まともな批判をしていたようである。

産経

【主張】オリンパス 企業統治が問われている (2011.10.31)

精密機器大手、オリンパスの混乱が収まらない。過去の企業買収を不透明だと指摘した英国人社長が就任から半年で解任され、それから2週間もたたない今月26日、社長を兼務していた菊川剛会長が「混乱を招いた」として辞任した。

海外のマスコミも高い関心を示すなど、日本企業の国際的な信用と企業統治のあり方が問われる深刻な問題である。新社長の高山修一氏は、第三者委員会を設置して買収の経緯などを調べるとしているが、信頼回復に何より求められるのは、調査のスピードであり、透明性の確保だと肝に銘じるべきだ。

問題の発端は、同社が3年前に英国の医療機器メーカーを約2100億円で買収した際、海外の投資助言会社に買収額の約3割にのぼる手数料を支払ったことだ。通常は数%とされる相場とかけ離れており、この問題を今夏になって知った当時のマイケル・ウッドフォード社長が菊川氏に問いただすと、逆に解任されたという。

オリンパス側は経営手法の違いが解任理由だとしていたが、ウッドフォード氏が英米紙でこの疑惑を公表すると、同社の株価は急落し、生保などの大株主も調査を求めた。菊川氏は混乱の責任を取る形で辞任したものの、その後は会見にも出席せず、説明責任を果たしているとはいえない。

オリンパスは海外で積極的に事業展開し、内視鏡の世界シェアは7割と高い。今回の騒動は日本以上に海外で注目されている。そのことを同社はもとより、日本企業は忘れてはなるまい。米調査会社GMIの企業統治ランキングによれば、日本はブラジルやロシアなどよりも低い。説明責任を果たせぬ企業は、グローバル化した経済社会では理解されないだろう。

企業統治をめぐっては、大王製紙の創業者一族の井川意高(もとたか)前会長が、子会社から個人的に100億円超もの巨額融資を受けていたことも問題になっている。

こうした常識では理解に苦しむ行為がまかり通るなら、海外からの日本投資は、ますます細ることになるだろう。東京証券取引所の斉藤惇社長が投資家保護の観点から徹底した調査と説明を求めているのもそのためだ。

日本の成長戦略が課題となっているが、まずは足元の企業統治を確立しなければ、競争力の強化などおぼつかない。



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