2012/11/14

【読書】外資系金融の終わり 藤沢数希



著者のブログもそうだが、世の中を小バカにしたストレートな物言いで、小気味よく外資系金融機関の実態と将来が語られる。

外資系金融の収益の源泉は、つまるところトレーディング部門であり、やっていることはヘッジファンドと同じである。手間暇かけてフィーを稼ぐ投資銀行業務やセールスに比べて、巨額のお金を運用するトレーディングははるかに効率的に金を儲けることができる。

しかしトレーディングには、モラルハザードという抜き難い構造的欠陥がある。ハイリスク・ハイリターンは金融の基本原理だが、個々のトレーダーからすれば、大儲けすれば億万長者になれるのに対し、大損をくらっても最悪クビになるだけで、無一文になったり膨大な借金を背負わされることはない(コイントスに喩えて、“Heads I win, tails you lose”と言われたりする)。ダウンサイドはこのように限定されているので、際限なくリスクを取ってアップサイドを追求する誘引が生まれる。

この構造は基本的にヘッジファンドでも同じだが、投資銀行の場合は、リーマンの破綻で明らかになったように、大きすぎて潰せない(Too big to fail)ので、税金で救済せざるを得なくなる。こうしてバブルの時に金融界が大儲けしたことのツケが、何も知らない納税者に回されるという矛盾が生まれる。

これに対して米国のボルカールールやバーゼルの金融規制は、大きすぎて潰せない巨大投資銀行を特定して(G-SIFIs)、自己勘定取引の制限や中核的自己資本の積み増しなど様々な規制をかけようとするものだが、著者はこれを社会主義的保護主義として批判する。むしろ正しい方向は、トレーディングを禁止して分離し、利益相反を抱えるマーケットと投資銀行部門も分離し、巨大すぎる投資銀行を解体することである、と。

内部を熟知する著者この提案は、それなりに説得力がある。実際、著者も描写するように、落ち着いていてプライドの高い投資銀行部門と、派手で勢いのあるセールスと、賢くて飾り気のないトレーディングと、羊のようなバイサイド及びバックオフィスとは、全く異なる人種の人々で構成されており、ほとんど同じ会社の人とは思えない。どうせウォールがあって緊密な連携などできないのだから、各モジュールが別会社となって経営しても大した問題はないように思える。

著者はヘッジファンド設立に向けて準備を進めているとのことである。外資系投資銀行のプロップ・トレーダーという存在を自己否定しているのだから、近いうちに本当に独立するのだろう。
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