2012/12/17

【読書】 デフレの真犯人―脱ROE革命で蘇る日本 北野一




本書でデフレの真犯人とされるのは、大雑把に言えば、過大なリターンを求める株主である。

最近も日銀がデフレの犯人として槍玉に挙げられているが、日銀が影響を与えられるのは負債の金利だけであり、これはゼロ近辺に張り付いてしまっているのでこれ以上どうしようもない。一方、企業には負債以外にもう一つ、株式という資金調達手段があり、債権者とは別に株主というステークホルダーがいる。純利益は株主に帰属するので、債権者に対する金利と同様の「コスト」である。この株主が求める期待リターン(ROE)が実力に見合わず高すぎるため(そして企業経営者もその過大な要求リターンに疑問を持つことなく応えようとするため)、投資が抑制されて経済が拡大しないのだ、というのが著者の基本的な主張である。

確かに、上場企業が中期計画で掲げるROE目標は10%程度以上であることが多く、アナリスト等が想定する株式資本コストも8%程度なので、(年限や格付けにもよるが)概ね2%くらいで調達できる負債と比べてあまりにも高い。にもかかわらず、企業は借金を返し続けて自己資本を厚くしてきた。一方で、日本の株は、デコボコを均せばバブル崩壊以降の20年以上、下がり続けており、年8%などのリターンなど到底実現できていない。何かがおかしいのだ。

尤も、日本企業に8%なり何なりのリターンが求められるのは、世界と競争しているからであって、それよりも低い目標を掲げれば、投資家は離れて行ってしまう、というのは著者も認めるところである。が、それでもよいからハードルレートを下げて事業を拡大すべきで、日本企業みんながそうすれば、結果的には経済が拡大して(8%とまではいかないかもしれないが)そこそこよいリターンが出てくるはずだ、ということのようである。それが実現する経路はあまり説明されていないが、この異端の論にそこまでの緻密さを求めるのは酷かもしれない(借用できる先行研究が少ないので)。着想としては面白いと思う

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