2017/10/25

【読書】 2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方 藤野貴教



息抜きに読んだ軽いタッチの本だが、直観的でなかなか面白い。

構造・非構造、論理・感情の二軸で分ける整理は、かなり納得感が高かった。松尾氏の本でも、人工知能時代に残るのは、高度な常識的判断が求められる仕事と、ヒューマンインターフェイスに関わる仕事というような趣旨が書かれていた。

機械に仕事を奪われると多くの人には収入を得る手段がなくなるからベーシックインカム、という議論は多いが、社会の受容性も含めて、そこまで行くかは疑わしい気がする。本書が提唱するようなAIとの棲み分け・協働は、2020年を超えた将来においても結構続くのかもしれない。

読書 | Comments(0) | Trackback(0)
2017/10/25

【読書】 人工知能は人間を超えるか 松尾豊




類書に比べると、人工知能の発展の歴史を理論的な側面も含めて深掘りしており、説明も分かりやすい。さすが第一人者。

2年以上前の本なので、その後の経緯と比べても興味深い。

本書が書かれた2015年初頭時点では、囲碁でAIが人間に勝つのは当分先だろうというのが、著者も含めた大方の予想だったが、2016年3月にアルファ碁がトップ棋士のイ・セドルを4勝1敗と圧倒し、2017年5月には世界最強とされる柯潔に三連勝した。
最新のアルファ碁は、もはや人間が作った定石にも依拠することなく、ルールだけを与えられた素人の状態から機械同士の対戦を積み重ねて成長し、以前イ・セドルを圧倒した時のバージョンに100戦全勝したという。

他方、東大合格を目指していた東ロボくんは、2016年11月に、短期間での達成を断念して開発を中断した。文脈理解や常識的判断はできないため、国語や英語はもちろん、得意教科である数学においても文章題では苦戦したようだ。

この二つの出来事は、象徴的なように思える。囲碁のように正解が明確に定義されれば、圧倒的な計算力を活かしてモンテカルロなどの力業で解いてしまうが、言語の意味を理解できない機械ができることには限界がある。ただし、最高のクオリティを求めずにそこそこのものを安価に作りまくることは、アルゴリズムでも可能。

なお松尾氏は、シンギュラリティに否定的な見解を示している。機械が人間の手を離れて自律的に発展するためには、「生命」や淘汰圧のようなメカニズムが必要だというのが理由のようだが、なぜそれを機械に基本的な動機をプログラムすることで植え付けられないのかは、よく分からなかった。


>>Read more
読書 | Comments(0) | Trackback(0)
2017/10/20

政局雑感

希望の党は、サンドバッグ状態になってしまった。日本人(あるいは日本のマスメディア)は、かつて不遜に振舞っていた人が叩かれて弱っていくのを見るのが大好きだ。ここ一週間ほどの小池叩きは、猪瀬氏や舛添氏へのバッシングショーによく似ている。

「排除」発言が転換点となったことは間違いないだろうが、うっかり口を滑らせたというよりは、根本的な戦略において小池氏や細野氏が欲張りすぎたのだと思う。彼女たちは、希望の党がそこそこ勝つことを前提に、選挙後の党内主導権を集中することを目指して、あまりにも多くの実力者を排除しようとした。それを露骨に示した細野氏の「三権の長経験者はご遠慮いただく」発言は、「排除」と同等以上に大きな失敗だったように思う。(2011年、史上最年少の首相になれたのに見送った細野氏には、チャンスは一度きり、という思いが強いのかもしれないが、自民党では、安倍首相は二回総理をやっているし、首相経験者である麻生氏や宮澤氏が閣僚として内閣を支えた例もある。首相経験者だからいけない、という基準の意味は、結局よく分からない。)

都知事を投げ出すことへの批判、後任知事が敵対勢力から出るリスクも避け、終盤では自民党傍流との連携も匂わせるなど、首班指名で迷走したことも、全てを取ろうとして自滅した結果だろう。対する立民党の分かりやすさを際立たせてしまっている。

(追記)

結局、立憲民主党と希望の党は明暗を分けた。希望の党が自滅した結果でもあるが、今の日本では、左派的「リベラル」の支持層は結構根強いのだろう。非現実的な安保政策を取らないと自民党との違いを打ち出せないのだとすると、日本には二大政党制は当分訪れないのだろう。

>>Read more
政治 | Comments(0) | Trackback(0)
2017/10/17

【読書】The Fate of West Bill Emmott




大仰なタイトルと知人の勧めに惹かれて買ってしまったが、巷で言われていることをまとめたような本で、今ひとつオリジナリティを感じなかった。

要は自由主義・オープンソサイエティの擁護論で、自由な政治的活動を認めることが民主主義の肝だが、それが行き過ぎると利益集団の跋扈を許すことになるので、民主主義は本質的に危機に陥りやすい矛盾を内包しており、不断の見直しとそれを守るための努力が必要だ、という辺りがポイントか。

ただ、20世紀型の利益集団の話が延々と出てくるが、彼らが政治家に献金して保護規制や補助金を勝ち取っていたという話と、現代の格差問題は、相当構図が違う。前者は比較的閉ざされた国境の内側での利権の囲い込みだったのに対し、現在の格差の原因は新興国や機械との競争により雇用や賃金が伸びないことだ。前者が市場機能が損なわれることの問題であるのに対し、後者は自由市場の拡大がもたらす帰結であって、ベクトルが逆である。

リーマンショック以来槍玉に挙げられる金融機関は規制による保護など求めておらず、むしろその緩和を歓迎している。かつてのマイクロソフトのような独占企業が金融界にいるわけでもない。

右から左に流すだけで何も生み出さずに高給を稼いでいるとの批判は理解できるが、それを是正して人々の納得感を得るために必要なことは、農業における「補助金削減と規制緩和」のように自明ではない。

だから「99%」の主張は経済原理や法の支配を無視した暴論になりがちで賛同者を得られず、シュプレヒコール以上の広がりを持てない。

しかし多くの人は難しい解決策を自分で考えようとはしないので、とにかく「平等」という結果を求め、それに対して賛意も解も提供してくれないエリート達を敵視して疎外感を強める。だからこその「『西洋』の危機」だと思うのだが、本書は現代の民主主義の危機を、単なる20世紀の延長のように捉えているように見える。

読了していないので、気が向いたらまた読むかもしれないが、今はひとまずもういいかな。
読書 | Comments(0) | Trackback(0)
2017/10/17

【読書】 未来の年表 人口減少日本でこれから起こること 河合雅司



政府機関等の各種推計を統合することで、日本の未来を描き出した労作。引用されるのは全て公開情報で、大規模な独自調査は行っていないし複雑な理論が出てくるわけでもないので、やる気と根気さえあれば本来誰にでもできるはずだが、なかなかここまで丹念にデータを集めることはできない。

既知のことも多いが、改めていくつか重要な視点をまとめてみる

・高齢者が激増するなかで、65-74歳は既に2017年に減少に転じ、高齢者の中身が75歳以上の「後期高齢者」にシフトしていく。当然、介護・医療ニーズが増える。特に首都圏で、キャパが不足し、配偶者に先立たれた独居老人が子どもを頼って上京するようになると、更に逼迫する
・子どもをあまり産まなかった世代が要介護世代に入るため(という書き方を本書はしていないが)、介護離職が激増
・一方で地方の人口はスカスカになり、銀行やスーパーから老人ホームまで、あらゆるインフラの営業が成り立たなくなって撤退が進む。更に無人島の増加は国土防衛の危機にも繋がる
・空き家問題は、地方でも都心でも深刻化
・増えすぎた大学は閉鎖・統合が不可避

要するに、大都市では総人口はあまり減らずに高齢者の実数が増える。地方では総人口が減り、高齢者の数はあまり変わらない。
したがって、大都市では高齢者を受け入れるキャパの不足が問題となり、地方では人口減少に伴う限界集落の増加が課題となる。これらの峻別が重要だ。

本書では、上記以外にも火葬場や輸血に至るまで、多岐に亘って考察している。市場が機能する分野ではニーズを汲み取るサービスが生まれるだろうが、政府が供給をコントロールする分野では、大学に見られるように、すでに破綻の兆しが見えている。

政府は余計な介入をせず社会全体でリスクを分散することも重要だが、コンパクトシティなど政治・行政の指導力が必要な分野もある。

人間の、そして日本人の対応力は信頼しているが、問題山積み過ぎて、読後にため息が出た一冊。




読書 | Comments(0) | Trackback(0)
« Prev | HOME | Next »